12月は作品集が2冊発売。『この橋をわたって』(新潮文庫/23日)&『影絵の街にて』(竹書房文庫/25日)

作品集が2冊、たて続けに発売されました。
12月23日に発売された『この橋をわたって』(新潮文庫)は、2019年に発売された単行本の文庫版です。


2014年以降に発表された短編小説やショートショートが収録されています。(静岡県人である僕にとっては、『静岡新聞』日曜版で毎週読んでいた「なごみちゃんの大晦日」が再び世に出るのがうれしいです。)あとがきは単行本版と文庫版の両方を収録。
なお、電子版も同時発売されていますので、本を置く場所が……と心配されている方も安心してご購入いただけます。
表紙イラストは、単行本版と同じくコマツシンヤ氏です。単行本版と同じ世界が印象的な配色で描かれていて、とても綺麗ですね。この世界にもストーリーがあるのでしょうか。なんだか気になります。
(このイラスト、大好きなのです。)


12月25日に発売された『影絵の街にて』(竹書房文庫)は、日下三蔵氏編纂による「日本SF傑作シリーズ」の1冊です。

影絵の街に囚われた大学生を描く表題作ほか、文庫初収録となる『季節のお話』『ちいさなおはなし』全話に加え、「センチメンタル・ジャーニイ」、<チグリスとユーフラテス>外伝「馬場さゆり」「あした」、野球SF「阪神が、勝ってしまった。」などの未収録短篇もふくめた、楽しくて、たまにドキッとさせられる作品集。

影絵の街にて|文庫|竹書房 -TAKESHOBO-


特筆すべきは収録作の多くが初文庫化、初収録ということです。
『まるまる新井素子』(1983年)において、新井素子さんが単行本には収録しないと仰っていた三作、「センチメンタル・ジャーニイ」「眠い、ねむうい、由紀子」、「影絵の街にて」が揃い踏み。「センチメンタル・ジャーニイ」は書籍初収録となります。いつか本になる日は来るのだろうかと長年待ちわびておりましたので、それだけでも感涙ものです。
また、表紙の写真を見た時には一瞬単行本で出るのかと勘違いした程の重厚感(実際に厚いんですけれども)と紙の感触、使用された活字などの懲りようは、本そのものへのフェティッシュな愛着が湧き起こると思います。持っているのが楽しい本です。
togetter.com
なお、電子版も2022年1月6日頃から配信されるそうです。
更に、久しぶりに新井素子さんのトーク&サイン会が開催されます。
www.horindo.co.jp
こちらもぜひぜひ。

近作を収録した短編集『この橋をわたって』と、旧作をまとめた作品集『影絵の街にて』(竹書房文庫)。
現在の新井素子さんの短編と昔の新井素子さんの短編を一緒に楽しめるのは、すごくいいですよね。

清水建設×日本SF作家クラブ「建設的な未来」の第23話は新井素子さん作「騙し舟」。


清水建設×日本SF作家クラブのコラボレーション企画「建設的な未来」は2019年10月にスタート。日本SF作家クラブの会員によるショートショート作品を、ほぼ毎月掲載しています。
11月24日に更新された第23話では、新井素子さんのショートショートが掲載されました。
タイトルは「騙し船」。イラストは海野螢氏です。
www.shimztechnonews.com

尚、新井素子さんは、第3話「新しいお遊び」(イラスト:麻宮騎亜氏)以来の二度目の登場となります。
www.shimztechnonews.com
どなた様もご堪能ください。

9月刊行のアンソロジー『作家と酒』(平凡社)に新井素子さんのエッセイ「あたしは御飯が好きなんだ!」が収録

2021年9月に平凡社から刊行されたアンソロジー『作家と酒』とはこのような本です。

酒呑みへ捧ぐ、作家と酒をめぐる44編! 昭和の文豪や現代の人気作家によるエッセイ、詩、漫画、写真資料を収録。ほろ酔い、泥酔、二日酔い……そして今宵も酒を呑む。

www.heibonsha.co.jp

この本に新井素子さんのエッセイ「あたしは御飯が好きなんだ!」が収録されました。
「このタイトルで何故『作家と酒』に収録されるのだろう?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、純然たるお酒にまつわるエッセイでございます。興味を持たれた未読の方は、ぜひお読みください。

ちなみに、「あたしは御飯が好きなんだ!」の初出は『話の特集』1982年10月号。その後、『まるまる新井素子』(1983年)、『新・ひでおと素子の愛の交換日記』(1986年)、文庫『ひでおと素子の愛の交換日記4』(1988年)に収録されました。

お酒と言えば、新井素子作品にはお酒が登場する場面がけっこうあります。
主人公の二日酔いから始まるお話(『ひとめあなたに…』『二分割幽霊綺譚』)とか、酔っ払った登場人物のせいで地球が大変なことになるお話(「宇宙魚顛末記」)とか。『あなたにここにいて欲しい』や『傍若無人な冷蔵庫 新婚物語3』のお酒を飲む場面も印象的です。『引っ越し貧乏 新婚物語2』では、ファージの名前の候補として「ゲッケイカン・アルミ・カップ」や「オオゼキ・ノモノモ」なんてのも出てきましたね。
作品とお酒の関わりを分析するのも面白そうです。

電子書籍でしか読めない新井素子さんの本【2021年10年版】

書籍は買えないけれども電子版なら買える、新井素子さんの本のリストです。
電子書籍については、ブログの仕様上Kindle版にリンクしていますが、他の電子書籍ストアでも同じタイトルが購入できます(一部を除く)。
尚、『おしまいの日』は過去に電子書籍が販売されていましたが、現在絶版となっております。
書店で購入できる書籍については、こちらのまとめをご覧ください。(電子版を併売している本もあります。)
新刊書店で購入できる新井素子さんの本【2021年10月版】

小説

『イン・ザ・ヘブン』(新潮文庫

☆短編集
☆収録作:「イン・ザ・ヘブン」、「つつがなきよう」、「あけみちゃん」、「林檎」、「ここを出たら」、「ノックの音が」、「絵里」、「幻臭」、「ゲーム」、「あの懐かしい蝉の声は」、「テトラポッドは暇を持て余しています」(エッセイ)

緑幻想 グリー・レクイエムII』(講談社文庫)

☆長編小説。「グリーン・レクイエム」の続編

窓のあちら側』(出版芸術社

☆自選作品集・初収録作あり
☆収録作→「グリーン・レクイエム」、「ネプチューン」、「雨の降る星 遠い夢」、「季節のお話」(「雪」・「蝉」・「夜」)、「眠い、ねむうい由紀子」、「影絵の街にて」、「大きなくすの木の下で」

新刊書店で購入できる新井素子さんの本【2021年10月版】

2021年10月の今、書店で入手できる新井素子さんの書籍をまとめてみました。
昨年版と比べてみますと、手に入らなかった単行本が文庫化したり、ベストセラーが復刊した一方、既に書店では購入できなくなってしまった本もありました。
新刊本が品切れ重版未定となるサイクルが、年々早まっているように感じます。新井素子ファンの皆様におかれましては、持っていない本は、見つけたらとりあえず買っておくのが吉ですよ。
※電子版が刊行されている書籍にはタイトル横に「※」を付けています。
※電子版のみの本についてはこちらのまとめを覧ください。
電子書籍でしか読めない新井素子さんの本【2021年10年版】
はてな今週のお題」に初めて参加してみます。今週のお題は「読書の秋」です。下記のリストを参考に、秋の夜長に新井素子さんの本を読んでみてはいかがでしょうか。)

小説

『ゆっくり十まで』(角川文庫)※

ショートショート
☆収録作:「ゆっくり十まで」「謎の男」「コンセント」「ここは氷の国」「初夢」「ぱっちん」「王妃様とサミ」「神様、それはどうなんだろう」「百二十年に一度のお祭り」「よろしく頼むわ」「体重計」「癒しの水槽」「あなたの匂いに包まれて」「守護者」「ひゃっほうっ!」
※電子版:ゆっくり十まで (角川文庫)

『絶対猫から動かない』(KADOKAWA)※

☆長編小説
※電子版:絶対猫から動かない (角川書店単行本)

『この橋をわたって』(新潮社)※

☆作品集
☆収録作:「橋を、架ける」、「黒猫ナイトの冒険」、「妾は、猫で御座います」、「倍倍ケーキ」、「秘密基地」、「お片づけロボット」、「碁盤事件」、「なごみちゃんの大晦日
※電子版:この橋をわたって

『未来へ……』(ハルキ文庫)※

☆長編小説
※電子版:未来へ……上 (ハルキ文庫)未来へ……下 (ハルキ文庫)

『銀婚式物語』(中公文庫)

☆「結婚物語」シリーズ第3弾

『ダイエット物語……ただし猫』(中公文庫)※

☆「結婚物語」シリーズ第4弾・中編集
☆収録作→「ダイエット物語……ただし猫」、「ダイエット物語……今度はヒト」、「大腸ポリープ物語」「リバウンド物語」、夫婦対談「素子さんの野望」手嶋政彦×新井素子
※電子版:ダイエット物語……ただし猫 (中公文庫)

作品コレクション

新井素子SF&ファンタジーコレクション』全3巻(柏書房

【第1巻 いつか猫になる日まで グリーン・レクイエム

☆収録作:「いつか猫になる日まで」、「グリーン・レクイエム」、「緑幻想」、収録作既刊の全あとがき

【第2巻 扉を開けて 二分割幽霊綺譚

☆収録作:「扉を開けて」、「斉木杳の憂鬱」、「二分割幽霊綺譚」、収録作既刊の全あとがき

【第3巻 ラビリンス〈迷宮〉 ディアナ・ディア・ディアス

☆収録作:「ラビリンス〈迷宮〉」、「ディアナ・ディア・ディアス」、「週に一度のお食事を」、「宇宙魚顛末記」、収録作既刊の全あとがき

新装版

・・・・・絶句』(ハヤカワ文庫JA)※

☆書き下ろし短編を収録。上巻:「秋野信拓の屈託」/下巻:「すみっこのひとりごと」
※電子版:……絶句(上)……絶句(下)

グリーン・レクイエム』(講談社文庫)※

講談社文庫50周年記念の復刊
☆収録作:「グリーン・レクイエム」「週に一度のお食事を」「宇宙魚顛末記」
※電子版:グリーン・レクイエム 新装版 (講談社文庫)

作品を収録したアンソロジー(小説)

『日本SF短篇50 II 1973-1982』(ハヤカワ文庫JA

honto.jp
☆「ネプチューン」を収録

『SF JACK』(角川文庫)※

☆「あの懐かしい蝉の声は」を収録(書き下ろし)
※電子版:SF JACK (角川文庫)

『片づけたい 暮らしの文藝』(河出書房新社

☆「お片づけロボット」を収録

『奇想天外 アンソロジー 21世紀版』(南雲堂)

☆「階段落ち人生」を収録(書き下ろし)

『プロジェクト:シャーロック 年刊日本SF傑作選』(創元SF文庫)

☆「階段落ち人生」を収録

『NOVA 2019春号』(河出文庫

☆「やおよろず神様承ります」を収録(書き下ろし)

『NOVA 2021年夏号』(河出文庫

☆「その神様は大腿骨を折ります」を収録(書き下ろし)

『甘美で痛いキス』(二見書房)

☆「ここを出たら」を収録

作品を収録したアンソロジー(エッセイ)

『一語一会 人生に効く言葉』(亜紀書房

☆「いっさい誓ってはならない」を収録

『未来力養成教室』(岩波ジュニア新書)

☆「小さなお部屋」を収録

『〆切本』(左右社)

☆「締切り忘れてた事件」を収録

関連書

『きまぐれ星からの伝言』(徳間書店

星新一生誕90周年記念バラエティブック
新井素子さんによる『声の網』解説と、新井素子さんのデビューが決まった伝説の「第一回奇想天外SF新人賞選考座談会」(選考委員:星新一小松左京筒井康隆)を収録

『生ける屍の死 永久保存版』(山口雅也/光文社)

☆長編ミステリ
新井素子さんのエッセイ「誰も考えたことがなかった裾野を新たに作ってしまったお話」を収録

『絶景本棚』(本の雑誌社

☆名だたる蔵書家の書棚を撮影した写真集。新井素子さんの家の書庫の写真も掲載

『60分でわかる心理学』(ニュートン・プレス)

☆エッセイ「旦那がいる日常」を掲載

『闇に用いる力学 特装版』(竹本健治/光文社)

honto.jp
☆特典小冊子に新井素子さんのエッセイ「お疲れ様でした」を収録