凪良ゆう氏『滅びの前のシャングリラ』の中公文庫版が1月23日に発売、巻末に新井素子さんとの対談を収録

凪良ゆう氏の傑作長編小説『滅びの前のシャングリラ』の文庫版が、1月23日に中公文庫より刊行されました。

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裏表紙の紹介文より。

「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」。学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして――荒廃していく世界の中で、人生をうまくいきられなかった人びとは、最期の時までをどう過ごすのか。滅びゆく運命の中で、幸せについて問う傑作。

小惑星の衝突で地球が滅びるまでをどう過ごすのかを描いた小説、と来れば『ひとめあなたに…』を思い起こす新井素子ファンも多かろうと思います。それで巻末に凪良ゆう氏と新井素子さんの対談が収録されるとは、なんという好企画なのでしょうか。
中央公論新社さんと中公文庫さんは新井素子作品の連載、出版、復刊、再刊に精力的に取り組んでいるイメージがありますが、またもうれしい企画を組んでくださいました。本当にありがとうございます。
新井素子ファンの皆様にもぜひ読んでいただきたい小説です。よろしければぜひぜひ。


若干ネタバレ気味に。
で、その対談の中で、凪良ゆう氏がこのように仰っていました。P.307より。

私は新井さんと対談ができると聞いた後、もう一度新井さんの作品を読み直して、改めて感動の嵐に飲まれていました。

さて、1月12発売の『本の雑誌』2024年2月号に掲載の「本屋大賞で買った本」は凪良ゆう氏のエッセイでした。タイトルは「怒涛の日々と巡り会えた本」。2023年に『汝、星のごとく』で二度目の本屋大賞を受賞し、その副賞である図書カード10万円を使って買った本のリストが掲載されております。
その中に『ひとめあなたに…』(創元SF文庫)と『グリーン・レクイエム』(講談社文庫)*1がありまして。想像ですが、この対談の前に「ひとめあなたに…」とその対になる中編「宇宙魚顛末記」を読み返そうと、本を購入し直したのではないでしょうか。なんと律儀な、と感動したことでございます。
この機会に、併せて読み返してみると面白いかも知れませんよ。*2

関連インタビュー

――終末の話を選んだということは、今度のご担当者のカラーというのは...。

凪良:「僕、『ディストラクション・ベイビーズ』が好きなんですよ」とおっしゃられたので、「この人、暴力もの書いても大丈夫だな」って思ったんです。どれだけ殺伐としていても許してもらえるわ、って(笑)。
でもその話はずっと書きたくて、じつは『流浪の月』の時もどちらを書くか迷ったんです。面白かったのが、東京創元社の担当さんも中公の担当さんも、「終末ものを書くなら、これだけは読んでおいて」というのが一緒だったんです。「その作品とは被らないようにしてほしい」って。伊坂幸太郎さんの『終末のフール』でした。東京創元社の担当さんはもう1冊、新井素子さんの『ひとめあなたに...』も挙げてくださいましたね。

――なるほど。どちらももうすぐ地球に隕石が衝突します、という世界の話ですね。

凪良:まあ、新井さんはもうすでに読んでいたのですが、伊坂さんの本は先に読んだら絶対に影響を受けてしまいそうで、読まずに先にプロットを書いて出して、それから読みました。「大丈夫、被ってない」と思っていたら、担当さんも「被ってないのでOKです」って言ってくれました。それで安心しましたが、でも、ああいう素晴らしい作品と被るところがなかったというのもちょっと悲しかったです(笑)。

作家の読書道 第214回:凪良ゆうさん

小説は小学6年か中学の頃に氷室冴子さんのファンになり、シンデレラシリーズを愛読しました。新井素子さんの『ひとめあなたに…』からも影響を受けたと思います

「有鄰」571号:人と作品 – 凪良ゆうと『滅びの前のシャングリラ』 滅亡を前に「幸せ」について問う4人の人生が交錯する物語

*1:現在発売中の新装版

*2:僕は『滅びの前のシャングリラ』単行本版を読んだ後に『ひとめあなたに…』と『グリーン・レクイエム』を読み返したんですよ。初めて気づいたことや懐かしい描写が楽しかったです。そしてまた『滅びの前のシャングリラ』を読んでいてふと思い出したことなども再確認できました。