本日発売の『Cobalt』2016年5月号(終刊号)に新井素子さんのコメント掲載、『Cobalt』はWebマガジンへ移行

少女小説誌『Cobalt』は、本日発売された2016年5月号にて紙媒体としての刊行を終了、同時に「集英社Webマガジン Cobalt」として再出発しました。
コバルト文庫はこの5月で創刊40周年を迎えます。5月号の巻頭では「40年のありがとうを込めて☆コバルト文庫創刊40周年特集!」が組まれ、その歴史を振り返っています。過去の人気作家、人気作も多数取り上げられました。レジェンド作家さんたちからの40周年おめでとうメッセージのコーナーでは、新井素子さんのコメントも掲載されています。


こんな機会なので、新井素子さんがコバルト文庫との関わりについて言及している文章を2つ引用してみたいと思います。
『まるまる新井素子』(別冊SFイズム/シャピオ/1983年)に収録されている談話「読者の手紙――ひっぱたいてかみついて」のP.151より。

あと、コバルトは女の子向けなので買いにくい、とかコバルトで書くのはやめて下さい、とかいうふうな手紙がくると、あたしは怒るの。
何を言ってるんだー、全然売れてなかった時にコバルトが拾ってくんなかったら、どこにも拾ってくんなかったんだぞ―っつって。
コバルトで『いつ猫』書かしてもらわなかったら、そもそも今こんな注文くるわけないと思うんですよね。
だからそういう、コバルトは買いにくいとか、いい加減少女ものを書くのはやめなさいっていう手紙がくるたびに、これを書かんかったら、あたしには注文がこなかったんじゃーっつって怒るのです。手紙に対して。
コバルトだけ読んでて他に全然知らない人が、「あたしの中の……」読んで、そのあとでSFなんか読んでくれると嬉しいな。

次に、『チグリスとユーフラテス』(集英社/1999年)の「あとがき」のP.492より。この小説のイメージは頭にあったもののどのように書いたらいいのか全く判らずに悩んでいる処で集英社の山田氏と喫茶店で会うことになった、という場面です。

直接お仕事をしたことこそあまりないんですが、山田さんって、私が非常にお世話になった方なんです。最初の本を出してすぐ連絡をくれた編集の方で、私のお話をかってくれ――とはいえ、当時の私はまだ高校生、さすがに集英社文芸編集部で本は出せないからって、コバルト文庫の編集長を紹介してくださったのが山田さん。でもって、処女作を出した出版社がつぶれて、原稿料も印税も踏み倒された私が、なんとか喰っていけたのは、偏にコバルト文庫でのお仕事があったからなんです。その上、コバルト文庫のおかげで、SFファン以外の読者を獲得することもできたし。

僕が初めて読んだのもコバルト文庫の『いつか猫になる日まで』でしたし、それで新井素子さんの大ファンになりましたから、コバルト文庫にはいくら感謝してもし足りない気持ちです。『Cobalt』がなければ発表されなかった作品はたくさんあった筈ですし、ずっと続編が書かれなかった『ブラック・キャット』シリーズを、前編を『Cobalt』掲載し後編は書き下ろしで刊行、という形で遂に完結させた編集者さんの手腕には畏敬の念を覚えました。
紙媒体の『Cobalt』がなくなるのは淋しいですが、Webマガジンと連動してコバルト文庫がますます面白い小説を発表してくれることを期待したいです。(さすがに新井素子さんはもう書かないのかな?)
【参考】新井素子研究会|新井素子関連の「小説ジュニア|Cobalt(コバルト)」


産経新聞にも『Cobalt』の休刊を伝える記事が掲載されました。

この記事がYahoo!ニュースでも取り上げられ、twitterでも大きな反響を呼んでいます。本日の新井素子タイムラインもこの記事へのリンクやリツイート、コバルトの休刊を惜しむ声で埋まっています。一時はトレンドに新井素子さんの名前が表示されていた、というから驚きです。
(もっとも、休刊自体は以前から発表されていたことであり、「休刊することが同日、分かった。」という書き方は違和感がありますね。)