2019年7~8月の新刊とイベントの予定です。新しい情報が判明しましたら、随時追加して行きます。
(タイトルを「7月」から「7~8月」に変更しました。2019-07-03)
- 7月17日頃
- 7月26日頃
- 7月27日(土)
- 8月3日(土)
- 8月10日(土)
- 8月22日頃
他に、集英社文庫の『チグリスとユーフラテス』(上・下巻)が新カバーで発売中です。書店で集英社文庫「ナツイチ」フェアをチェックしてみて下さい。
☆
なお、8月8日は新井素子さんのお誕生日であります。
2019年7~8月の新刊とイベントの予定です。新しい情報が判明しましたら、随時追加して行きます。
(タイトルを「7月」から「7~8月」に変更しました。2019-07-03)
他に、集英社文庫の『チグリスとユーフラテス』(上・下巻)が新カバーで発売中です。書店で集英社文庫「ナツイチ」フェアをチェックしてみて下さい。
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なお、8月8日は新井素子さんのお誕生日であります。
かねてよりトークショウなどで新井素子さんから予告されていた柏書房の”旧作合本3部作”の第1巻が、7月に刊行されることが決まりました。
タイトルは『新井素子SF&ファンタジーコレクション1』。
異星人たちの宇宙戦争に巻き込まれた若き男女六人の痛快な活躍を描く『いつか猫になる日まで』、緑色の髪の少女の重大な秘密と恋を描く、第12回星雲賞日本短編部門受賞作『グリーン・レクイエム』とその続編『緑幻想』の三作品を収録。付録として単行本・文庫本など刊行の度に書かれた「著者あとがき」をすべて収録、新井素子の軌跡をたどることのできる資料としても貴重なシリーズ、刊行開始(全三巻)。
なんと素晴らしい企画なのでしょうか。「いつか猫になる日まで」「グリーン・レクイエム」「緑幻想」が1冊にまとまるというのもすごいですが、特筆すべきはそれらが刊行された時の「あとがき」が全て収録される、ということです。
この本に関してツイートした処、編者の日下三蔵氏よりお返事を頂きました。
この本のあとがき、もちろん付きます! もう原稿もいただいています。しかし、既刊のあとがき10本収録って冷静に考えたら狂気の企画ですねw 新井さんにも編集さんにも本気?と言われました。でも「既刊を探す必要がなくなる」のが私の考える理想の復刊なので、これは必須なのです。
— 日下三蔵 (@sanzokusaka) June 28, 2019
夢枕貘さんや菊地秀行さんのようにあとがきだけ集めた本を出してる方は別として、普通の単行本で作品の他にあとがきが10本入っているのは、かなり珍しいと思います。私は自分ならこんな本が欲しいと思う内容の本を作っているだけなので、それが他のファンのニーズと一致しているならうれしいことです。
— 日下三蔵 (@sanzokusaka) June 29, 2019
2巻以降も既刊のあとがきは入れますし、未収録の関連する短篇、対談、エッセイ、評論、インタビューなども可能な限り追加するつもりです。
— 日下三蔵 (@sanzokusaka) June 29, 2019
読んでいて心がウキウキしてきました。素晴らしいですね。
収録されるのは10本とのことですので、たぶんこのような内訳かと思います。
ちなみに、『グリーン・レクイエム』講談社愛蔵版あとがきは、中編小説である「グリーン・レクイエム」を単独で書籍化するために書かれたもので、なんと32ページもあるのです。2017年に刊行された『逆恨みのネメシス』新装・完全版(出版芸術社)のあとがきに抜かれるまで、新井素子作品のあとがきで歴代1位の長さを誇っていたという強者であります。これも収録されるなんて!
そして新しいあとがきが1本収録されるので全部で「あとがき」が11本、更に資料的価値のある記事を収録とは、素晴らしすぎるではありませんか。
6月30日に行われた『星から来た船 中』刊行記念トーク&サイン会では、収録内容について新井素子さんが、これ日下さん以外誰が喜ぶんだ、と仰っていましたが、いやいや大喜びする人はたくさんいると思いますよ。少なくとも狂喜しているのがここに一人います。
上記のイベントでは、第1巻が本文2段組で400ページを超える本になること、刊行は隔月になること、単行本未収録だった短編「斉木杳の憂鬱 第十三あかねマンション物語・序」が他の巻に収録されることも仰っておられました。第2巻には「扉を開けて」と「二分割幽霊綺譚」、第3巻には「ラビリンス――迷宮――」と「ディアナ・ディア・ディアス」が収録されます。もう素晴らしいという言葉しか出てきません。
7月1日現在、この本はネット書店にまだ登録されておらず、正式な発売日は判っておりません。公式サイトでは出版年月日が7月24日と書いてありますので、(出版延期がない限り)だいたいその頃かなと予想して心の準備を進めましょう。見逃し、買い逃しがあるといけませんので、よろしければ書店でのご予約をぜひぜひよろしくお願い致します。
☆
(あと、個人的な希望として、新井素子さんと日下三蔵氏の対談イベントを開催して頂けると、とてもうれしいなあと思っております。)
amazonに登録されました。判明したこともありますので追記しておきます。
正式なタイトルは『新井素子SF&ファンタジーコレクション1』、発売日は7月26日頃、価格は2,916円(税込)、イラストはシライシユウコ氏、とのこと。
なお、正式タイトルに合わせて、記事のタイトルと本文を修正しました。
毎年恒例、集英社文庫の夏の読書フェア「ナツイチ」が6月21日より全国書店にて開催されます。今年は、新井素子さんの『チグリスとユーフラテス』が久しぶりに登場します。
そして、なんと『チグリスとユーフラテス』の表紙イラストが新しくなるようです!!
「ナツイチ2019」公式サイト↓の「切ない本」のコーナーをちょっと覗いてみて下さい。
bunko.shueisha.co.jp
全然予期していませんでしたので最初に見た時は驚きましたが、いい感じです。実物を手にとるのが実に楽しみです。
思えば、この文庫版が刊行されたのは2002年でした。それ以来、「絶版」にも「品切れ重版未定」にもならずに17年間も読み継がれてきた、ということが素晴らしいです。Twitterでは毎日のように、昨今の少子高齢化の問題でこの物語を思い出したというツイートや、この本からどのような影響を受けたかを語っているツイートを見ます。今また「ナツイチ」に登場するなんて、もはや世代を超えた名作と言っても過言ではないと思います。フェアの対象書籍となったことで書店で見つけやすくなりますので、今まで触れたことのない方々にもこの機会に読んでもらえるといいなあと思います。
繰り返しますが、集英社文庫「ナツイチ」フェアは6月21日より開催です。ぜひ店頭で新しい表紙をご覧ください。(ただし、お店によって開始日が異なる場合もありますのでご注意下さい)
こちらは現行版の表紙(が表示されている筈)。
6月30日(日)に紀伊國屋書店新宿本店にて、「『星から来た船 中』 刊行記念 新井素子さんトーク&サイン会」が開催されます。
www.kinokuniya.co.jp
新井素子さんの人気シリーズ、新装・完全版「星へ行く船」番外編第2巻!
『星から来た船 中』の刊行を記念し、トークショーを開催。
新井さんが「自分の為に書いたようなお話」と語る、『星から来た船』について、
思う存分お話ししていただきます。
定員は先着50名とのこと。受付は6月13日から既に始まっています。ご希望の方はお早めにお申し込み下さい。
☆
『星から来た船 中』新装・完全版は、6月19日頃に発売予定です。
www.spng.jp
7月17日頃発売の『星から来た船 下』新装・完全版も書影が出ております。
麻子さんかな?
www.spng.jp
『星から来た船』(出版芸術社)は、3ヶ月連続刊行中です。大槻香奈氏による素晴らしい装画と書き下ろし短編や新あとがきも収録された新装・完全版です。よろしくお願い致します。
「今更聞けない百合ヒストリー」第1~3回を読みました。問題点を指摘する前に「百合」について少し述べたいと思います。2003年に刊行された雑誌『百合姉妹』VOL.1では、「百合」を「思春期の少女に特有の、少女同士の行き過ぎた愛情」と定義していました。https://t.co/0czHeoNvB4
— 新井素子研究会 (@motoken1989) May 9, 2019
「愛情」というのは恋愛関係に限定される感情ではない、ということに注意が必要です。新井素子作品では『いつか猫になる日まで』が挙がっていますね。もくずとあさみの関係に「百合」を見ているのかも知れません。
— 新井素子研究会 (@motoken1989) May 9, 2019
またここでは雑誌の方針として「思春期の少女に特有」としていますが、年齢の制限を外して女性一般の関係と捉えれば、『チグリスとユーフラテス』のルナちゃんと女性たちの関係に「百合」を見る人がいるのも理解はできます。
— 新井素子研究会 (@motoken1989) May 9, 2019
小説に限った話ではありませんが、本編に描かれている人間関係から受け手側が想像を膨らませ、ある特殊な性質を見出したり付け加えたりするという楽しみ方は存在しますよね。新井素子さんの作品を「百合」と解釈するのもその一環であるようです。
— 新井素子研究会 (@motoken1989) May 9, 2019
つまり作者の意図や作品の性質とはあんまり関係ない、見える人にはそう見えてしまう、ということなのかなと思います。(もちろん最初から「百合」を目指して制作された作品はこの限りではありません)
— 新井素子研究会 (@motoken1989) May 9, 2019
それはそれとして、僕が問題だと思ったのは、ここで語られている新井素子さんを巡る状況に事実誤認が多く含まれているっぽい、という処です。https://t.co/HS7OzB2RZ4
— 新井素子研究会 (@motoken1989) May 9, 2019
が、もう時間も時間なので、明日以降に書こうと思います。
話の続きです。
「今更聞けない百合ヒストリー~独断と偏見による百合概論と歴史について、GWなので本気出して考えてみた~大正・昭和編」という記事の「集英社コバルト文庫の創刊とライトノベルの始祖・新井素子」の項に書いてある新井素子さんのプロフィールは、納得しかねるものでありました。まとめるとこんな感じです。
「天才少女・新井素子の書く小説は純文学でもなくSFとも言い切れず私小説でもないため当時の文壇には居場所がなかった。しかし少女小説誌『小説ジュニア』(後の『Cobalt』)という場を得たことで水を得た魚のように意欲作を多く発表した。そこで経験を積みその世界に触れたことが彼女の百合才能を開花させる一因となった。大学に進学してからは、本格SFを多数執筆し多くの作品で「女性同士の共依存的友情」を描いた。」
☆
居場所。
新井素子さんは高校生の時に、SF雑誌『奇想天外』が主催した「第1回奇想天外SF新人賞」で佳作を受賞し、SF作家としてデビューしました。筆者の方は「SFとも言い切れず」と仰っていますからSFとは思えないのかも知れませんが、世に出るきっかけはSFとして認められたことでした。元々ご本人も星新一の作品を読んだことがきっかけで中学生の頃からSF作家を志望しておられまして、SF雑誌では久々に開催された新人賞ということもあり、選考委員も高名なSF作家である星新一、小松左京、筒井康隆の三氏が務めるという豪華さと、この期を逃すと次にいつ募集があるか判らないという切迫感から応募されたようです。
デビュー後は大学受験のための休筆期間とその影響によるスランプ(1978-1979年)を挟んで、『奇想天外』、『高一コース』、『小説ジュニア』などの雑誌にSF小説を発表していきます。『奇想天外』でデビューしたことからSFファンの認知度は高く、日本SF大会に参加したファンが選ぶ「星雲賞」日本短編部門を、1981年に「グリーン・レクイエム」で、1982年に「ネプチューン」で、2年連続で受賞するなど高い支持を受けてもいたのです。少なくともSF界隈には「居場所がない」なんてことはありませんでした。
新井素子さんのコバルト文庫(集英社文庫コバルトシリーズ)初登場は、1980年の『いつか猫になる日まで』でした。これは書き下ろしで刊行され、背表紙のタイトル脇には「SFコメディ」とキャプションが付いていました。『小説ジュニア』に小説が掲載されるのは、その後になります。昔は短編小説を書くのは苦手だとよく書いておられましたが、その頃に『小説ジュニア』『Cobalt』に掲載された小説も実はそんなに多くはありません。また、当時は他社からも並行して長編小説を刊行しており、厳密に言えば『Cobalt』だけが執筆の拠り処という訳ではありませんでした。
コバルト文庫との仕事のきっかけについては単行本版『チグリスとユーフラテス』(集英社)の「あとがき」に記述があります。P.492より。
直接お仕事をしたことこそあまりないんですが、山田さんって、わたしが非常にお世話になった方なんです。最初の本*1を出してすぐ連絡をくれた編集の方で、私のお話をかってくれ――とはいえ、当時の私はまだ高校生、さすがに集英社文芸編集部で本は出せないからって、コバルト文庫の編集長を紹介して下さったのが山田さん。でもって、処女作を出した出版社がつぶれて、原稿料も印税も踏み倒された私が、なんとか喰っていけたのは、偏にコバルト文庫でのお仕事があったからなんです。その上、コバルト文庫のおかげで、SFファン以外の読者を獲得することもできたし。
仕事をし出した経緯が、記事で筆者の方が書いたプロフィールとは異なっているのが判ります。
☆
「百合」。
新井素子作品の「百合」要素というのは面白い視点だと思います。よくよく考えてみると1977年のデビュー作「あたしの中の……」にも既にしてエクーディとルナによる「百合」のような関係が見られます。コバルト文庫初登場作である『いつか猫になる日まで』のもくずとあさみの関係を「百合」と見做す向きもあったりします。
故に、その辺りは『Cobalt』での経験の反映というよりも、新井素子作品が元々内包している性質なのではないか、というのが個人的な印象です。そう言えば、映画『グリーン・レクイエム』のパンフレット掲載の今関あきよし監督との対談で、新井素子さんはこんなことを仰っていました。
新井 ようするに、私たち2人とも、女の子が可愛ければどうでもいいっていうポリシーで仕事してるんですよね。
今関 基本的にそうですね。
新井 私も小説書いてて、本当にラブ・シーンの少ない作家だってしょっちゅう思うくらいだし、私も主人公の女の子気に入ってるから、あんまり男の子とベタベタさせたくないというか。だいたい私の小説の女の子って、なんかあっても、みんな男の子を脇で見てるだけですよ。でも、私、ヒロインの相手役の男の子に嫉妬したことはないぞ(笑)。
話を元に戻すと、記事中で紹介されている『扉を開けて』の初出も『Cobalt』ではなく、『奇想天外』の1981年6月号でして、単行本は1982年にCBSソニー出版から一般文芸書として刊行、1985年にコバルト文庫から再刊行されました。そもそも作品の成立過程に『Cobalt』は関わっていません。筆者の方はこのような経緯を知らずに、コバルト文庫のために書かれた作品だと誤解していたのかも知れません。
↑こちらの記事では、初出に関する訂正が追記されましたが。
※1:5月8日追記 「扉を開けて」の初出はコバルト文庫ではなくCBSソニー文庫であり、コバルトへの移籍出版は1983年でしたので、時系列に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
ご覧のようにその訂正文にも誤りがあります。
ともあれ、作中の「百合」要素を『Cobalt』に結びつけて語るのは、安易な図式化なのではないかと思いました。
☆
新井素子作品に描かれた印象的な女性同士の繋がりと言えば、『通りすがりのレイディ』のあゆみちゃんとレイディ、『カレンダー・ガール』のあゆみちゃんとまりかちゃん、『逆恨みのネメシス』のあゆみちゃんと信乃さん、『ラビリンス――迷宮――』のサーラとトゥード、『・・・・・絶句』のもとちゃんと拓ちゃん(!)、「ブラック・キャット」のキャットと千秋、等々「今更聞けない百合ヒストリー~独断と偏見による百合概論と歴史について、GWなので本気出して考えてみた~大正・昭和編」で紹介された作品の他にもまだまだありますので(「共依存」はそんなに多くはないとは思いますが)、その辺りはもっと語ってみてもいいのではないでしょうか。
その後10年以上にわたり文壇で「あれは文学ではない」「いや新しい文学の始まりだ」と論じられるほどでした。
この文章のソースを知りたいのですが、どなたかご存知ではありませんか。デビュー後に作品について賛否両論があったという噂は聴くのですが、誰がどこで言っていたかというのを具体的に知らないのです。